実習に使用する道具、材料と使用方法
技工布
すべての作業を技工布の上で行い、ワックス屑などの後始末を各自できちんと行うこと。
2倍大歯牙模型
実習の参考模型である。この模型の形、寸法、特徴などをよく観察して、ワックスにて類似するものを再現する。ただし、彫刻のサイズを問わず、バランスがとれていることを重視する。一般的に報告されている形態と違いがあっても、臨床歯冠形態に個人差があることから、今回はこの模型の形態を優先する。
技工用ノギスおよび定規
2倍大歯牙模型の寸法を測定するためのものである。
図1a.ノギスによる測定の例-凸状面の場合
図1b.ノギスによる測定の例-凹面の場合
ワックス棒
このワックス棒を用いて、彫ったり、ワックスを盛ったりして、2倍大歯牙模型に類似したものを製作する。
彫るための器具
切り出しナイフ
最初は切り出しナイフを用いて、大きくワックスをカットし、大雑把な歯形を作る。その際、切り出しナイフを自分の指、手や身体に向けず、切り出しナイフの動きを十分にコントロールできる姿勢(フィンガーレスト等)で慎重に行うこと(図2a, b)。
フィンガーレストとは作業中に右手(左利きの場合は左手)ないしは左手の指をワックス棒にしっかりと固定することを言います(図 2)。
なお、利き手は切り出しナイフを固定し、利き手でない親指で切り出しナイフを押すように操作すると良い。
図2a.切り出しナイフを用いてワックス棒のカットを行った例
図2b.切り出しナイフを用いてワックス棒のカットを行った例
彫刻刀(エバンス)
切り出しナイフによるカットに引き継ぎ、彫刻刀(図3)にて細部を再現し、最終的な形態を仕上げる。
図3.彫刻刀(エバンス)
彫刻刀の持ち方は筆記道具と同様で、作業中に右手(左利きの場合は左手)の薬指でワックス棒にしっかりと固定する(フィンガーレスト)。彫刻刀を用いてワックス棒を彫る(図4a,b)。
図4a.軸面を彫る例
図4b.咬合面を彫る例
ワックスカーバー(ホ−レンバック)
ホ−レンバック(図5)を細かいところ(溝、歯頚線など)の仕上げに使う
図5.ワックスカーバー(ホ−レンバック)
注意:上述の3つの器具は削るためのものであり、ワックスを溶かして盛るための道具ではない。(誤って焼いてしまうと削れなくなる可能性が高い)
ワックスを盛るための器具
ワックス形成器(キャポン)
キャポンのワックス形成器(図6)を用いて、少量のワックスを盛り、溶かしたワックスの形をある程度整える。
図6.ワックス形成器(キャポン)
ワックススパチュラ
ワックススパチュラ(図7, 8)はワックスを多めに盛るときに用いる。「歯形彫刻実習」ではワックススパチュラ(#2)(図8)を使用し、「歯の形態と機能実習」では盛る量に合わせて使い分ける。
図7.ワックススパチュラ(#31)
図8.ワックススパチュラ(#2)
アルコールランプおよびアルコールランプ用アルコール
アルコールランプにアルコールを入れ、芯に火をつけ、ワックスを溶かして盛る。
ワックスの盛り方
キャポンのワックス形成器またはワックススパチュラをアルコールランプの火に当てて、熱くなったら盛りたいワックスに当てて、溶かしたワックスを器具の先に乗せて、ワックス棒に盛る。
ワックスが固まったら、エバンスなどで盛った跡は残らないように形を整えます。
注意:
火または溶かしたワックスによる指、手、髪の毛、服などの火傷に十分気をつけること。ワックスを盛る必要がないときは、アルコールランプを消すこと。
仕上げ、研磨のための器具
作業中に削ったワックス屑を豚毛ブラシにて撤去し、歯形が再現されたら、ガーゼ、ストッキング等で仕上げ研磨を行う。